鷲野さんは手捺染と呼ばれる技法で染色を行う90年ほどつづく鷲野染工場の3代目。近年、動いて見える錯視を使った柄の染色を生み出した。
手捺染とは、型・スキージ(ゴムべら)・色糊の3つで行う染色技法で、すべてが手作業。色糊を生成し、布に型をあてがって一色ずつ染色してゆく。量産型の印刷機と比べて手作業のため、色の深み・色合いがはっきりと出るのが特徴。
幼いころは自宅が工房だったため、若い方が住み込みで働いている光景を見ていた。小学生の頃から職人さんに教えられて色々と仕事の手伝いをしていたそう。
29歳の頃に会社を継ぐことに。しかし業界が衰退し景気が悪くなり、未来に少し不安が生まれ、自分にしかできない事や技術を残す事を考えるようになった。
そして、ある出来事がきっかけで錯覚がテーマになることに。いろんな人との縁で、錯視を研究する第一人者・立命館大学の北岡教授と出会う。それをきっかけに今まで存在しなかった「動いて見える錯視」と「染物」を掛け合わせたいと伝えると快く受け入れてもらえる。様々な試行錯誤を繰りかえし、他にはない染物の完成に至る。

