今や国内外でその名前が浸透しつつある「京野菜」。京都の農産物をブランド化しようという事業が本格的に始まったのが、今からちょうど30年前の平成元年。

それまで、みかんなら「和歌山」、りんごなら「青森」と言う風に品目ごとに、ブランド産地のイメージはあったものの、「京都」という地名が全面に押し出され、様々な品目がまとめてブランド品として扱われる~ということは、殆どありませんでした。

なぜ「京野菜」は、ブランドとしての地位をここまで確立することができたのか。その要因をひもときつつ、日本の食・農産物輸出 拡大の先鞭を切って、セールスを行うJAグループ京都の戦略をリポートします。


賀茂なす

現在「京のブランド産品」に認定されているのは31品目。優れた品質が保証され、安心・安全と環境に配慮した生産を行っているものを対象としています。

京都の農産物のブランド化事業が始まった平成元年には、4千万円にも満たなかったブランド産品は、わずか10年あまりで15億円以上まで生産が拡大。今では、京都府の農業産出額ではお米を抜いて野菜が第一位となっています。(写真は京のブランド産品のひとつ「賀茂なす」)

京みず菜

京野菜のブランド化が成功した要因ですが、ひとつには当初から首都圏の百貨店で販売を行うなど、「高級志向の販売戦略」が功を奏したこと。また、昔のままの京野菜を販売するのではなく「核家族化や食の欧米化」にも対応した新しい形の商品開発を行ったことも成功の一因と思われます。(京みず菜が代表的な例)

ほかにも、京都の中央卸売市場ならではの「近郷野菜売場」(京都や滋賀の伝統野菜を扱う専門の売場)で、目利きのプロが商品を扱っているという高い信頼性、その信頼に応えるべく生産現場で、徹底した人づくり、産地づくりをJAグループが行ってきたことも、ブランド確立の大きな原動力となりました。(写真は、市場のせり人とJAの営農指導員による、青とう農家を集めての技術指導風景)

晩餐会

国内で「京野菜ブランド」が浸透した平成25年。日本の食・農業の輸出拡大の先鞭を切る形で、JAグループ京都は新たな海外戦略をスタート。京都産の食材を使った晩餐会を、海外各地で、それも、世界遺産級の文化遺産を舞台に開催するプロジェクトを始めました。

当初は、フランス、トルコ、中国という世界三大料理の地から、京都産の農畜産物の魅力を発信。続いては、具体的な輸出の活路を開くべく、ロシア、イギリスで開催。今ではオールジャパンで、このプロジェクトを推進しています。

過去、5年間の事業を振り返りながら、京都の、そして日本の農業の未来についても考えます。(写真は、トルコ・イスタンブールのトプカプ宮殿での晩餐会)