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はじりさんの宿題ブログ(もやし編)

沢山好きな食べ物がある。焼肉もやし、お寿司もやし、エビフライもやし、パスタもやし。しかしやはりあいつには敵わないのかもしれない。あの食材には......。丸みを帯びたすらっとしたボディ。ボンキュッボンならぬキュッキュッキュッ。塗りたてのワックスの体育館で練習しているバスケ部がサイドステップしているかのような擬音がぴったり。更に真っ白い肌。塗りたてのワックスの体育館で練習しているバスケ部が練習終わりに汗を拭うタオルのように。その中にも透明感がある。塗りたてのワックスの体育館で練習しているバスケ部が踏んでいる床に塗っているワックスのような。そして、スッと伸び太陽の光を受けキラキラと輝く長い金髪。塗りたてのワックスの体育館で練習しているバスケ部のマネージャーが試合前いつも作ってくれた蜂蜜レモンような。何にでも合うそのオールマイティさ。すごいよねー。そうだあいつとおれが初めて出会った時の事を話そう。あれはおれが高校の頃だ。当日おれは高校3年生、バスケ部として夏の最後の試合を迎えるためサイドステップの猛練習をしていた。3年間の集大成をこの大会で全てぶつけるんだと練習に熱が入っていたのが原因だろうか。その頃おれは必殺技のダンクシュートの練習をしていた。このシュートはハーフラインから後ろ向きにジャンプし天井まで飛び、天井を蹴り返し逆Vラインを描き体ごと直接ゴールにボールをぶち込むという技だ。おれの目測ではこれはスリーポイントシュートになる。その練習をしている際に足がもつれ転倒してしまった。先日この体育館はワックスを塗りなおしたばかりで床が全く滑らず、そのせいだろう、おれは足を怪我してしまった。全治2週間、3週間後の試合には間に合う。しかし医者からは過度な負荷を足にかけるともう二度とバスケは愚か長時間座っている囲碁や将棋も出来なくなると言われた。おれの必殺技は足に5Gもの圧がかかる。こんな状態ではあの技は使えない。天井まではいけるだろうがそこで力付き、屋根に張り付いた状態になってしまう。体育館の天井に挟まったバレーボールと同じ運命なんて真っ平ごめんだ。畜生、あの必殺技があれば、あの必殺技さえあれば三回戦突破も夢じゃなかったのに。おれはボクシングのリングに真っ白いタオルを投げ込まれた気分だった。そう、いつも練習終わりに使っているタオルとおんなじようなやつを。全く一緒のメーカーの。試合当日、相変わらず足の調子は悪いまま試合は始まった。1、2回戦を順調に突破した俺たちだったが、反則をおかしまくったせいで相手のゴールが直径3mもの大きさになっていた。これじゃ天才コアラでもシュート出来ちまうぜ。しかも、相手チームは全員2m越えのブラジル人。ベンチはもうサンバの準備をしてやがる。舐めやがって。後半ラスト1分を切った時点で得点は2:0。おれたちが2点を追う形だ。あの技を使わなければこの試合勝てない。悩んでいる暇はない。おれは相手のシュートミスを拾いハーフコートラインから後ろ向きにジャンプした。天井に着いたが足は問題ないと思ったがその時左足首付け根に激痛が走った。このままではゴールまでジャンプ出来ない。おれはこのまま一生天井にべばり着いてコウモリ男などと呼ばれ街のみんなに親しまれるしかないのか......。その時口の中に甘みが広がった。なんだ??この甘みは??それは食べ親しんだマネージャーの蜂蜜レモンの味だった。三回戦が始まる直前に食べたレモンが歯の隙間に挟まって今更出てきやがったって訳だ。その瞬間、おれの体に力が漲った。余談だがおれはこの蜂蜜レモン、確実に違法なものが入ってると睨んでる。以前マネージャーが暗い路地でアジア人と密会しているのも見かけた。あのバスケ部のみんなの様子もなんか変だ。おれは天井を思いっきり蹴り上げた。よし、このままゴールをすれば逆転だ、いけー!だが何故か体が動いていない。何故だ、天井を蹴った感触はあった。何故だ。それもその訳だ、蜂蜜レモンのおかげで力が漲ったおれは想像をはるかに上回る力で天井を蹴り上げ、その衝撃で天井の壁は吹き飛びおれの足元には丸い穴がぽっかりと空いていた。おれの推進力は天井がなくなった事であらぬ方向に消えて無くなってしまったのだ。試合終了を告げるブザーと共に天井の穴からは一本の白い光が体育館に差し込んだ。会場中の人間がその光を一心に見つめていた。その光はそう、ボンキュッボンというよりかはキュッキュッキュッ。すらっとしたボディ。真っ白の中に透明感のある、一本の光。その見た目はまさに、あれだったとみなは口々に言う。

(文字数;1887文字)