京都の何気ない会話の中にある、「雅な京ことば」をポッドキャスティングとテキストでお届けする、「ぽっどきゃすと京ことば」。言葉の響きの向こう側にある、「京の文化」をお楽しみください。

出演
おさだ塾(演劇塾長田学舎)

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2008年12月

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ぽっどきゃすと京ことば「へちゃ」

今回の京ことばは、「へちゃ」。


「へちゃ」

「あの子は へちゃやけど、ほんまに気立てのえぇ子やなぁ」

「へちゃ」―これは今でも たまぁに耳にする言葉とちがいますやろか。
「へちゃ」は 鼻の低い顔のことどす。器量のようない顔、いわゆる美人の反対の意味でつかわれます。語源は、へちゃげる・へちゃがる で、鼻の低いことを「鼻べちゃ」「鼻ぺちゃ」いいますけど、その「鼻」の部分が省略されて生まれた言葉どす。褒め言葉や おへんけど、かというて意地の悪い気持ちはこめられてへん、なんとのぅ愛嬌のある不思議なことばどすなぁ。

ぽっどきゃすと京ことば「すかんたらしぃ」

今回の京ことばは、「すかんたらしぃ」。


「すかんたらしぃ」

「そないに すかんたらしぃ言い方せんでも えぇやないの」

「すかんたらしぃ」―これは使わへんにしても、なんとのぅ意味はわかる言葉とちがいますやろか。
「すかん」は「好(す)かぬ」 つまり 好きやない、言うことどす。そやさかい「すかんたらしぃ」は、イヤや、好ましぃない いう意味で使われます。憎い言うより憎たらしぃ、重い、よりも重たい、眠い より眠たい、言うたほうが、より強調されて、感じがよう出ますわなぁ。「すかんたらしぃ」も同じどす。単に「好かん」いうより、「イヤ」いう気持ちが よぉ出てますなぁ。

ぽっどきゃすと京ことば「どんつき」

今回の京ことばは、「どんつき」。


「どんつき」

「あぁ、田中さんどすか。この路地(ろおじ)の どんつきを左へ曲がって二軒目どす」

「どんつき」―これは、今でも使われてる ことばの一つどすなぁ。
へぇ、これも京ことばやの と、おいいやすかもしれまへんけど、「どんつき」は れっきとした京ことばどす。「突きあたり」や 袋小路のことを いいます。どんと突き当たったところ、と いうとこから生まれた言い方どす。京都には、昔から狭い路地(ろおじ)が たんとありますさかい、どんつきも仰山(ぎょうさん)あることになります。ほんに、土地柄に根ざした、生きた言葉の一つどすな。

ぽっどきゃすと京ことば「すかたん」

今回の京ことばは、「すかたん」。


「すかたん」

「あっ、忘れてた。ハガキ買うて来て てたのまれれてたのに。うちは、ほんまに すかたんやなぁ」

「すかたん」―なんやしらん愛嬌のあるいい方どすなぁ。
これは とんちんかん、間のぬけたこと、あべこべ、見当ちがいいうことどす。すかたんのスカは、すかす、あざむく いう意味で、タンは だれだれちゃん、なになにさん という、親しみをこめた呼び方どす。失敗をしても、「しょうがないなぁ」と苦笑いをして許してもらえたりする そんな力をもってる言葉の一つとちがいますやろか。

ぽっどきゃすと京ことば「ほっといてんか」

今回の京ことばは、「ほっといてんか」。


「ほっといてんか」

「うちはうちで勝手にするさかい、ほっといてんか」

えらい きつい言い方どすな。
「ほっといてんか」―こういわれたら、傍(はた)のもんは、黙ってひっこむしか おへんな。「ほっといて」いうのは、放っておいてほしい、かまわんといてほしい、いうことどす。「うちはうち、こっちのことは こっちでするさかい、関係ない人は口出しせんといて」いう強い気持ちが感じられるいい方どす。「ほっといとうおくれやす」と丁寧にいうたかて、意味は同じどす。かえって冷(つめと)う、キツウ聞こえますなぁ。
ほんに、言葉は おもしろいもんどすなぁ。

ぽっどきゃすと京ことば「ぽっぽ」

今回の京ことばは、「ぽっぽ」。


「ぽっぽ」

「はい、おつり。落としたらあかんえ。なくさんように、ぽっぽへ ないないしといてな」

「ぽっぽ」。可愛らしい響きどすやろ。
「ぽっぽ」いうのは ふところのことどす。ふところは ほところ ともいい、ほところの「ほ」の音を二つ重ねて「ほほ」が「ぽっぽ」になったんやそうどす。「ぽっぽへ ないないする」というのは「ふところへ大事に入れる」という可愛らしい幼児語どしたのに、それが いつの間にやら大人の世界の着服とか横領のような、悪い意味に使われるようになってしもぅたんどす。もとの言葉に申し訳おへんなぁ。もとの言葉が可哀想どすな。

ぽっどきゃすと京ことば「きちきち」

今回の京ことばは、「きちきち」。


「きちきち」

「お隣さんに、おはぎのおすそ分けするの」
「ふん。けど、このお重では あんまりきちきちやしもう一つ大きい方のお重、出して来てくれるか」

「きちきち」。これは寸法やら分量がいっぱいすぎて、もぅ、これ以上入らへん、きゅうくつな時に使う言葉どす。「いゃぁ、どうしょ。このスカート、きちきちで入らんようになってしもた」みたいにどすな。また、あまりにも几帳面すぎるような人には、「そないに、きちきちせんでも よろしおすえ」というようにも使います。「きっちり」を二度重ねて「きっちり、きっちり」 それが「きちきち」になったんどすな。

ぽっどきゃすと京ことば「こぅつと」

今回の京ことばは、「こぅつと」。


「こぅつと」

「こないだの本、ぼちぼち返さんなんし、出しといてな」
「はぁは。―いやっ、どこ置いたやろ…こぅつと。一寸(ちょっと)待ってや」

「こぅつと」。近頃は、めっきり聞くことがのうなりましたけど、一寸(ちょっと)昔までは、ごく普通に使われてた京ことばなんどすえ。こうする、ああする いう時の「こう」が語源で、「えぇっと、どうやったかいな」と思い出そうとしたり、「どうしようかなぁ」と考えごとをする時なんかに、ひとりでに口をついて出てくる言葉どす。なんとのう、昔のくらしの歩度が感じられる、味わい深い言葉どすな。

ぽっどきゃすと京ことば「むしやしない」

今回の京ことばは、「むしやしない」。


「むしやしない」

「何つくってんの。また、孝二の虫養いか」
「おなかへらして帰って来るさかいな。ドーナツでも揚げといてやろう思て」

「むしやしない」―今でも、けっこう使われてる言葉どす。
お腹の虫が「おなかへった、おなかへった」と騒ぐのを、一寸(ちょっと)の間おさめてやるための食べもののことで「虫おさえ」ともいいますな。おうどんとか お蕎麦、パン、おまんじゅうなど、軽い食べもののことどす。お客さまが見えてて、時分どきに まだちょっと間がある時など「虫やしないどすけど」いうて、お蕎麦や、ちらし寿しなんかをお出しすることもありますな。

ぽっどきゃすと京ことば「おてしょう」

今回の京ことばは、「おてしょう」。


「おてしょう」

「おてしょうが足らしまへんの。もぅ二・三枚もって来とうくれやす」

「おてしょう」は京都独特のいい方どす。
手に塩をおくの「手塩」に、丁寧語の「お」をつけた「お手塩」―。その「お手塩」をのせる「お手塩皿」いうのが語源どす。手塩いうのは昔、不浄を清める意味で、お食事のお膳に添えられてた、ほん 少しの塩のことどす。そこから、お手塩をのせる皿のような小皿を「おてしょう」いうようになりました。この言葉も使うお方が少うなりましたけどええ言葉どすなぁ。

ぽっどきゃすと京ことば「素うどん」

今回の京ことばは、「素うどん」。


「素うどん」

「こう暑いと のどごしのえゝ素うどんか おそうめんが一番どすな」

昔から、京の町の人たちの、ふだんのお食事はそら質素なもんどした。
質素の「素(そ)」の字を「素(す)」というて、うどんの頭につけたのが「素うどん」どす。「素(す)」には、何も足さへん、それだけのもの いう意味があります。そやさかい素うどんとは、かやくの何も入らへん おうどんのことどす。食欲のないとき、時間がないとき、懐がさびしいとき、素うどんは、今でも立派に私らのくらしに根づいてます。この言葉も たべものも、まだまだ生きていきますやろうな。